仁鶴の落語を絶賛 『CD/上方落語特選 笑福亭 仁鶴全10巻』より ☆☆☆☆

『CD/上方落語特選 笑福亭 仁鶴全10巻』


笑福亭 仁鶴は、上方落語界の逸材だと思う。

実績もあり、人気、実力を考えれば、今頃は、上方落語の先頭に立って、牽引していなければならないと思うのだが、どうも、御当人はマイペースのようだ。

かって、仁鶴が一世を風靡したこ頃のことを、ご存知だろうか?

現在では、上方の落語家が、テレビタレントとして、随分活躍しているが、さしずめ、仁鶴は、その走りだと言っていいだろう。

独特の大阪弁の喋り口、あのホームベースのようなエラの張った顔、一度見たら忘れられない。

そのエラのため、出産には難儀したという。

イメージできるかな? 

毎週NHKで放映されている「バラエティー生活笑百科」の法律相談で司会をしている。

「四角い仁鶴がまぁ~るくおさめまっせぇ」というお馴染みの出だしのフレーズで始まる長寿番組だ。

考えてみれば、今では、レギュラー番組は、これ一本ではないのか? 

いやもう、この人の最盛期の人気は、凄まじいものがあった。

テレビをつければ、どこのチャンネルでも、あの四角い愛嬌のある顔が見られたものだ。

「どんなんかな~」というギャグも、大いに流行った。

きっと、落語家で、大ヒット曲を持つのは、この人だけだろう。

『おばちゃんの歌』だ。

知ってますか?

「わたしゃ、ビルの、お掃除おばちゃん、モップかついで生きていく。……ガンバッテヤ、おばちゃん!」というような、歌詞だったと思う。

甚だ記憶はあやしい。

しかし、おじさん、この歌で、初めて、ビルメンテナンスという仕事があるのを知った。

当時、何らかの理由で寡婦となり、子供を抱えて生きていくため、おばちゃんたちが、早朝や夜遅く、ビルのお掃除婦として、逞しくも、涙ぐましく働いていたのだ。

ということで、当時、何となく、大阪の下町に育ったように思える仁鶴と、おじさん、生い立ちがダブっている様な気がして、すごく親近感があった。

いやまあ、おじさんにとって、この人は、単なる落語家以上に、気になる存在だったのである。

その後、仁鶴は、人気が落ちてくるにつれて、自らも収束させていったような気がしてならない。

それが自然な流れだったのか、それとも、この人の中で何があったのか知らないが、おじさんにとっては、何か、《遠慮のかたまり》になってしまったように思えてならない。

ということで、どこか、心に引っ掛かっていたので、今回、この仁鶴の落語全集を聴いてみる気になった。

そう言えば、おじさんも、仁鶴のタレント業の方の活躍だけに気を取られて、本業である落語の方を、きっちり聴いたことがなかったのだ。

まあ、例の如く、夜な夜な、この全集を、睡眠薬代わりに一枚一枚、じっくり?聴くことになったのだが、これが、存外、良いのである。

そうか、仁鶴の真骨頂は、当たり前のことなのだが、本業の落語にあったのだ。

特に、おじさん、感心したのは、落語の本題に入る前の、枕というか、前振りの部分のネタの軽妙さだ。

ホント、的確で、落語の本筋の話と、違和感なくマッチしている。

これが、彼のオリジナルなら、いやはや、クレバーな落語家だと思った。

ところで、落語自体だが、やはり、彼の生まれ育った下町の大阪弁というか、メリハリの効いた独特の語り口は上方落語のネタと、本当に相性が良い。

大阪弁に歯切れが良いというのは妙だが、東京の下町のように、大阪でも下町の大阪弁は、結構、はっきり、ものを言う元気の良いものなのだ。

その仁鶴の歯切れの良い大阪弁が、落語で描き出される古き良き時代の大阪の下町の情感を十二分に引き出してくれる。

落語の絶妙な間といい、メリハリといい、凄く上手いのだ。

本来の落語という本筋から言っても、やはり、この人が、六代目の笑福亭松鶴を襲名すべきだったと思う。

何故か、襲名しなかった理由はわからないが、これは、一門の問題。

まあ、落語界でも、歌舞伎の役者のように、その力量に関わりなく、子供が継ぐようになってきたから、六代目 松鶴の息子が松鶴の名跡を継ぐことになるのも無べなるかなである。

落語界の伝統では、その血筋に捉われることなく、襲名は実力のある者が引き継ぐという、良き伝統があったのだが、それも今は昔か、しかたがないことだ。

まあ、仁鶴の場合、あの大酒飲みで、破天荒な六代目 松鶴のイメージは、自分にはそぐわないと思ったのかもしれない。

いずれにしろ、まあ、名前など瑣末なことなのだが、今回、あらためて、笑福亭仁鶴の落語を、じっくり聴いてみて、勝手だが、この人が、最も、上方落語協会会長に相応しいのではないかと思うのだが、どうだろうか?

なにしろ、ご本人は、我が道を行くということらしいので、残念なことだ。

  ※ヤフーブログにて 2012年3月22日 アップ

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