犯罪は、人間の心の問題 『玉村警部補の災難』より ☆☆☆
『玉村警部補の災難』 著者 海堂 尊
このシリーズ、まだ続いていたのだ。
この作者の執念には恐れ入った。
限られた医療と言う領域、限られた大学と言う組織、限られた人物、いやはや、手持ちの駒で、これほど書けるとは、いささか恐れ入った。
おじさん、この作家に、二足のわらじを脱ぐことも、医療以外の他のテリトリーの小説を書くことも、もはや、薦めることをやめる。
何も言うまい。
いやもう、興味は、これで、どこまで押し通せるかに移ってきたのだ。
さて、作品についてだが、とにかく、おじさん、このシリーズを読むのは久しぶりだが、まあ、相も変わらずと言う感じだ。
ただし、今回は、若干、原点回帰、玉村警部補の事件簿の形態を取りながら、短編構成となっている。
短編だから、従来、長編の形態を借りて社会にアピールしてきたことを、再度、シャープな形で総括している。
一体、この人は、ミステリーを書きたいのか、自分の属している医療領域の社会的問題をアピールしたいのか、その優先順位が、どうも、はっきりしない。
おじさん、いまだに分からない。
まあ、今回は、オムニバスの4編の短い殺人事件からなり、大きくミステリーの方に振れているようである。
東条大学の田口医師と玉村警部補が、警視庁のハウンドドッグこと加納警視正の事件解決への鮮やかなお手並みを追想していくと言う形を取る。
【事件簿1】
遺棄死体の行政検死が、いかに、ずさんなものか、やる気のない監察医の所見により、行き倒れのほとんどの遺体が、簡単に心不全による身元不明死体となってしまう現状を鋭く突く。
ここで、著者の持論である、AI(不審遺体のCTやMRSによる悉皆検死確認システム)の早期導入の訴えとなる。
話はこうだ。
いい加減な監察医のいるエリアで、それを良いことにして、ヤクザが仲間内の抗争により発生した殺人死体を、エリアの公園に遺棄すると言う事例が頻発する。
そのエリアの監察医の所見は、いつも心不全だ。
まともに死体の観察などされてはいないのだ。
もちろん、余程のことがない限り、解剖の伴う司法検死にはならない。
そこで、見事、ハウンドドッグが、腐りきった制度の闇を世直しするのである。
【事件簿2】
現在のDNA鑑定による特定誤差は、44億分の1程度だと言う。
となれば、DNA鑑定で一致した場合には、ほぼ、100%の確率で犯人だと認証することができる。
ところが、それは、DNAの認証が、不正なく実施された場合に限る。
いくら、精度が高くても、それを利用する側に悪意があれば、その信頼性が高いと思われているだけに、却って、犯罪を強固に裏付けてしまうことになる。
例えば、DNA履歴を管理する病院の方に問題があり、情報が漏れたり、改竄されたりする場合だ。
要は、それを活用する制度がしっかり確立されていないと、もろ刃の剣になると言うことだ。
この事件はDNAの高い信頼性を逆手に取った事件として描かれている。
【事件簿3】
事故現場が火事などで、外観から判別できない焼死体の身元確認に大きな力を発揮するのが、デンタルチェックである。
つまり、歯並びや歯の治療の痕跡の照合なのだ。
これも、DNA同様に、符合した場合の誤差は極めて小さい。
ところが、この歯並びや歯の治療の痕跡を変えてしまう、闇のデンタリストが存在すると言うことである。
言わば、死者のための歯医者さんだ。
他人の身元不明の死体に、自らの歯並びや治療の痕跡を移植し、自殺した焼死体に見せかけることにより、自らの存在を消してしまうのである。
警察は、歯科医院に残っている治療時のカルテと、焼死体の歯並びや治療跡をデンタルチェック(照合)して本人と確認するのである。
金歯などは何よりの決め手になるのだ。
こうして、ヤクザの幹部などは戸籍を消してしまい、他人になりすまし、外国などに逃亡してしまうのである。
オウムの菊池直子のように、新しい戸籍は、金さえ出せば簡単に手に入るのだ。
そんな、闇ビジネスが横行していることは言うまでもない。
またもや、ハウンドドッグは吠えるのである。
【事件簿4】
これは、新しい警察捜査の可能性を示す話だ。
大きな声では言えない。
ご存知の通り、グーグルには、《グーグル・ビュー》と言うサービスがある。
日本全国各地の公的な道路について、その周辺の情景を、居ながらにして表示できるサービスだ。
実は、おじさんの住んでいる所も、例外なく見事に盗撮されていた。
周辺に花が咲き乱れていた頃である。
一見、幸福いっぱいの家に見えていた。
エヘヘ!
まあ、それは、どうでも良い。
このサービスは、一時、コソ泥や強盗に下調べデーターを与えるとして、大いに問題になったようである。
確か、米軍や自衛隊の基地周辺の映像は、防衛上の問題からオミットされているのではないか?
おじさん、プライバシーの面でも、いかがかなと思うところがある。
ところで、もう一つ、コソ泥や強盗、悪いことをやろうとしている人には、逆に、都合の悪いサービスがある。
それが、《グーグル・アーツ》だ。
米国の偵察衛星の使用済み払下げ映像を提供する、例のアレである。
住所を検索サーチに打ち込めば、瞬く間に、その地点の衛星写真を提供してくれる。
かなりのズーム・アップで、驚く程に鮮明だ。
日本でも、独自に、最近、成功が続いて調子の良いH2Aロケットで、この偵察衛星が打ち上げられている。
地上1m位の物体なら、十分に識別可能だと言う。
この衛星が、日本全土を、くまなく一定時間ごとに監視しているとなると、これは高速道路のオービスどころではない。
コソ泥には、脅威だと言える。
「しめしめ、完璧な仕事をした」と思っていると、しばらくして、何の前触れもなく、逮捕状を携えた警官が玄関に現れると言うことになる。
コソ泥の現場の動かぬ証拠が、衛星写真に写っていたと言うことになるのだ。
まあ、政治家なども、夜の密会は確実にチェックされることになるだろう。
橋下市長、気を付けて!
ゆめゆめ、奥さんに隠れて、ホステスさんと……と言う訳にはいかない。
まあ、それは、さておき、この衛星監視システムが警察に導入されたら、警察捜査には大革命がもたらされるに違いない。
と言って、おじさん、ここまでは…と思ってしまう。
いささか、覗き趣味が度を超しているようで、あまり気持ちの良いものではない。
いやはや、ドッグイヤーの科学の進歩は留まるところがない。
だから、犯罪者の悪知恵と科学捜査技術の進歩はイタチごっこだ。
キリがない。
そこで、おじさん思うのだが、ぐうたら猫お奨めのキャットイヤーで行くのも、時には良いのではないか?
のんびり、あるがままにやっていくのだ。
進んでも、進まなくても、結局は一緒。
要は、犯罪は人間の心の問題で、科学の問題ではないのだ。
五右衛門いわく、まさに、「石川や 浜の真砂は 尽くるとも 世に盗人の 種は尽くまじ」である。
ヤレヤレ!
※ヤフーブログにて 2012年8月22日 アップ
このシリーズ、まだ続いていたのだ。
この作者の執念には恐れ入った。
限られた医療と言う領域、限られた大学と言う組織、限られた人物、いやはや、手持ちの駒で、これほど書けるとは、いささか恐れ入った。
おじさん、この作家に、二足のわらじを脱ぐことも、医療以外の他のテリトリーの小説を書くことも、もはや、薦めることをやめる。
何も言うまい。
いやもう、興味は、これで、どこまで押し通せるかに移ってきたのだ。
さて、作品についてだが、とにかく、おじさん、このシリーズを読むのは久しぶりだが、まあ、相も変わらずと言う感じだ。
ただし、今回は、若干、原点回帰、玉村警部補の事件簿の形態を取りながら、短編構成となっている。
短編だから、従来、長編の形態を借りて社会にアピールしてきたことを、再度、シャープな形で総括している。
一体、この人は、ミステリーを書きたいのか、自分の属している医療領域の社会的問題をアピールしたいのか、その優先順位が、どうも、はっきりしない。
おじさん、いまだに分からない。
まあ、今回は、オムニバスの4編の短い殺人事件からなり、大きくミステリーの方に振れているようである。
東条大学の田口医師と玉村警部補が、警視庁のハウンドドッグこと加納警視正の事件解決への鮮やかなお手並みを追想していくと言う形を取る。
【事件簿1】
遺棄死体の行政検死が、いかに、ずさんなものか、やる気のない監察医の所見により、行き倒れのほとんどの遺体が、簡単に心不全による身元不明死体となってしまう現状を鋭く突く。
ここで、著者の持論である、AI(不審遺体のCTやMRSによる悉皆検死確認システム)の早期導入の訴えとなる。
話はこうだ。
いい加減な監察医のいるエリアで、それを良いことにして、ヤクザが仲間内の抗争により発生した殺人死体を、エリアの公園に遺棄すると言う事例が頻発する。
そのエリアの監察医の所見は、いつも心不全だ。
まともに死体の観察などされてはいないのだ。
もちろん、余程のことがない限り、解剖の伴う司法検死にはならない。
そこで、見事、ハウンドドッグが、腐りきった制度の闇を世直しするのである。
【事件簿2】
現在のDNA鑑定による特定誤差は、44億分の1程度だと言う。
となれば、DNA鑑定で一致した場合には、ほぼ、100%の確率で犯人だと認証することができる。
ところが、それは、DNAの認証が、不正なく実施された場合に限る。
いくら、精度が高くても、それを利用する側に悪意があれば、その信頼性が高いと思われているだけに、却って、犯罪を強固に裏付けてしまうことになる。
例えば、DNA履歴を管理する病院の方に問題があり、情報が漏れたり、改竄されたりする場合だ。
要は、それを活用する制度がしっかり確立されていないと、もろ刃の剣になると言うことだ。
この事件はDNAの高い信頼性を逆手に取った事件として描かれている。
【事件簿3】
事故現場が火事などで、外観から判別できない焼死体の身元確認に大きな力を発揮するのが、デンタルチェックである。
つまり、歯並びや歯の治療の痕跡の照合なのだ。
これも、DNA同様に、符合した場合の誤差は極めて小さい。
ところが、この歯並びや歯の治療の痕跡を変えてしまう、闇のデンタリストが存在すると言うことである。
言わば、死者のための歯医者さんだ。
他人の身元不明の死体に、自らの歯並びや治療の痕跡を移植し、自殺した焼死体に見せかけることにより、自らの存在を消してしまうのである。
警察は、歯科医院に残っている治療時のカルテと、焼死体の歯並びや治療跡をデンタルチェック(照合)して本人と確認するのである。
金歯などは何よりの決め手になるのだ。
こうして、ヤクザの幹部などは戸籍を消してしまい、他人になりすまし、外国などに逃亡してしまうのである。
オウムの菊池直子のように、新しい戸籍は、金さえ出せば簡単に手に入るのだ。
そんな、闇ビジネスが横行していることは言うまでもない。
またもや、ハウンドドッグは吠えるのである。
【事件簿4】
これは、新しい警察捜査の可能性を示す話だ。
大きな声では言えない。
ご存知の通り、グーグルには、《グーグル・ビュー》と言うサービスがある。
日本全国各地の公的な道路について、その周辺の情景を、居ながらにして表示できるサービスだ。
実は、おじさんの住んでいる所も、例外なく見事に盗撮されていた。
周辺に花が咲き乱れていた頃である。
一見、幸福いっぱいの家に見えていた。
エヘヘ!
まあ、それは、どうでも良い。
このサービスは、一時、コソ泥や強盗に下調べデーターを与えるとして、大いに問題になったようである。
確か、米軍や自衛隊の基地周辺の映像は、防衛上の問題からオミットされているのではないか?
おじさん、プライバシーの面でも、いかがかなと思うところがある。
ところで、もう一つ、コソ泥や強盗、悪いことをやろうとしている人には、逆に、都合の悪いサービスがある。
それが、《グーグル・アーツ》だ。
米国の偵察衛星の使用済み払下げ映像を提供する、例のアレである。
住所を検索サーチに打ち込めば、瞬く間に、その地点の衛星写真を提供してくれる。
かなりのズーム・アップで、驚く程に鮮明だ。
日本でも、独自に、最近、成功が続いて調子の良いH2Aロケットで、この偵察衛星が打ち上げられている。
地上1m位の物体なら、十分に識別可能だと言う。
この衛星が、日本全土を、くまなく一定時間ごとに監視しているとなると、これは高速道路のオービスどころではない。
コソ泥には、脅威だと言える。
「しめしめ、完璧な仕事をした」と思っていると、しばらくして、何の前触れもなく、逮捕状を携えた警官が玄関に現れると言うことになる。
コソ泥の現場の動かぬ証拠が、衛星写真に写っていたと言うことになるのだ。
まあ、政治家なども、夜の密会は確実にチェックされることになるだろう。
橋下市長、気を付けて!
ゆめゆめ、奥さんに隠れて、ホステスさんと……と言う訳にはいかない。
まあ、それは、さておき、この衛星監視システムが警察に導入されたら、警察捜査には大革命がもたらされるに違いない。
と言って、おじさん、ここまでは…と思ってしまう。
いささか、覗き趣味が度を超しているようで、あまり気持ちの良いものではない。
いやはや、ドッグイヤーの科学の進歩は留まるところがない。
だから、犯罪者の悪知恵と科学捜査技術の進歩はイタチごっこだ。
キリがない。
そこで、おじさん思うのだが、ぐうたら猫お奨めのキャットイヤーで行くのも、時には良いのではないか?
のんびり、あるがままにやっていくのだ。
進んでも、進まなくても、結局は一緒。
要は、犯罪は人間の心の問題で、科学の問題ではないのだ。
五右衛門いわく、まさに、「石川や 浜の真砂は 尽くるとも 世に盗人の 種は尽くまじ」である。
ヤレヤレ!
※ヤフーブログにて 2012年8月22日 アップ
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