いつの世も、宮仕えは辛いものだ 『映画/超高速!参勤交代』より ☆に関係なし

『映画/超高速!参勤交代』
※原作 土橋 章宏

オャ? おじさん、このストーリー、どこかで読んだような気がする。

そうだ、思い出した。

既に、この古本屋でも取り上げた、浅田次郎さんの『一路』だ。

随分、道具立てが似ている。

おじさん、この映画の原作者である土橋章宏さんの小説の方は読んではいない。

だから、あくまで、映画を観ての印象での比較検討だが、圧倒的に、浅田次郎さんの『一路』の方が、作品としての懐は深いと思う。

小説の構成も、ストーリーの魅力も、そして、オヤジギャグも、浅田さんが一枚上手のようだ。

むろん、参勤交代を扱っていると言う点では、物語のバックボーンは共通している。

『一路』は、参勤交代の殿様を暗殺すると言う、時代劇ミステリー仕立てとなっている。

いきなり、若い藩士が参勤交代の取り仕切りを命じられ、その大役を、武士の一徹で果たすと言う人間ドラマとして描かれている。

一方、『超高速!参勤交代』は、まさに、時代劇アクション物語だ。

高速参勤交代のタネ明かしとスリリングな展開が売りだ。

まあ、読みたい人が、お好きな方を選択すれば良い。

いやはや、おじさんは、もう寄る年波なので、アクションだけでは、いささか物足りない。

だから、この参勤交代を舞台にした作品対決は、浅田次郎さんの『一路』の方に軍配を上げたい。

とは言え、映画化するなら、ずっと、『超高速!参勤交代』の方が適しているかも知れない。

何しろ超高速参勤交代だけに、撮影日数も短くなるし、必然、製作コストも安上がりだろう。アハハ! 

さらに、映画受けする華々しいアクション場面も随所に設定され、エンターティメント映画向きだと言えるだろう。

しかし、おじさん、『一路』の方の映画化作品も観てみたい気がしないでもない。

これは、かなりの製作費がかかることだろう。

無理かな。

まあ、前置きはこれくらいにして、とにかく、映画の内容に入ろう。

江戸時代、八代将軍吉宗の治世の頃である。

東北の岩城国にある小藩 湯長谷藩(福島県いわき市)が、幕府から金鉱山の存在を隠蔽しているのではないかとの疑いをかけられる。

いやはや、その疑惑を解くために、わずか三日間で、江戸に参勤交代し、申し開きをせよとの下知だ。

むろん、これは、幕府 老中の陰謀である。

本来なら、十日間はかかる参勤交代を、三日間に短縮しろと言うのだから、ただただ無理難題でしかない。

最初から、幕府の小藩取り潰しの意図が見え見えだ。

申し開きが間に合わなければ、藩は、恐らく消滅してしまうだろう。

実際、この前例のない沙汰は、賄賂を持参しようともしない世間知らずの田舎大名に、見るもの見せてやろうと言う悪徳老中の企みだった。

はて、本当に間に合うのだろうか? 

意表をつく奇策が練られる。

残念ながら、超高速参勤交代がいかに行われたかについては、ここでは明かせない。

映画の興味を削いでしまう。

こうして、参勤交代をやり遂げようとする側、それを拒もうとする側、公儀隠密や、一匹狼の雇われ忍者、さらに、宿場女郎などが絡み合って、ドタバタアクション活劇となっている。

まあ、内容の深さについてはともかく、暇つぶしのエンターティメントとして観るなら、楽しめる一作である。

それに、久しぶりに見るフカキョン(深田恭子)さんの宿場女郎役は、彼女の新たな面を見せてくれて、なかなか好演だと思う。

さて、およそ、こんな中味だが、これ以上書く程、映画は深くはない。

おじさん、単純に楽しめば、それで良いと、割り切って鑑賞するのが良いと思う。

深読みする必要はない。

そこで、おじさん、これでは、あまりにも愛想がないので、自らの参勤交代的経験について書く。

しかしながら、よくよく考えてみれば、この参勤交代と言う制度は、世界史的にも、世にも奇妙な制度だと思わざる得ない。

いやもう、人類歴史上、類を見ないのではないだろうか? 

人質として、諸侯の妻子を江戸に住まわせる。

そこに、所領地から三年毎に参勤させると言うのだ。

その参勤交代には、何しろ、大人数の行列だけに、旅費に莫大な費用がかかる。

だから、諸侯が謀反を起こそうとするだけの財貨の備えができない。

一体、こんな途方もない茶番劇を大真面目に実行させるなど、誰が考え出したのだろうか? 

家康、それとも、側近の参謀 本多正純かな? 

茶坊主の金地院崇伝かも知れない。

いやあ、誠にユニークな発想の持ち主だ。

まさに、このアイデア、封建制度の徒花と言えるかも知れない。

まあ、それはともかく、おじさん、現役時代、もちろん、妻子の人質は取られることはなかったが、週に一度、一年間ほど、この「超高速参勤往復」をやっていたことがある。

時は、現在から遡ること、20年ほど前。

おじさん、江戸城ではなく、東京の秋葉原にある某大手製紙メーカーの子会社に、週に一回ほど、将軍お出ましの殿中での会議に出仕することを義務づけられていた。

奥河内にある自宅から東京秋葉原まで、将軍?のご拝謁に浴するため、たった一日で、参勤往復しなければならなかった。

当時、今でもそうかな? 大手企業の本社と子会社の間には、甚だしい序列格差が存在した。

大体、本社の重役や部長レベルの役職が、子会社社長を兼任すると言う状況だった。

だから、週の内何日か、そうした人たちが、本社から、子会社の社長として、会社に重役出勤してくるのだ。

まあ、その時に、子会社の経営状態の確認と、今後の経営戦略を方向づける会議が開かれる。

いやもう、雰囲気の悪い、胃の痛くなるようなコワイ会議だ。

おじさん、その頃、外部ブレーンとして、当時流行していた、企業のポートフォリオ経営分析のお手伝いをしていた。

会社の主な商品ジャンル別事業における売り上げ規模、市場シェア、売上げ総利益の伸び率を二軸分析し、子会社の経営状況を一目見て分かるようにビジュアル化する手法だ。

いやあ、懐かしい。

この手法を適用すれば、どこの商品事業部が会社に貢献し、あるいは、足を引っ張っているかが一目瞭然になる。

会議に参加した商品事業部長たちは、戦々恐々として、その会議に臨んでいる。

極端に言えば、ダイレクトに商品事業部長としてのマネジメント能力が評価される。

言わば、管理職としての首がかかっているのだ。

おじさんは、部外者だけれど、そのビリビリした空気に、「もらい緊張」してしまう。

仕事だから、この会議には、嫌でも同席しなければならない。

まさに、この会議は、商品事業部長である諸侯たちと、生殺与奪の権を持つ社長である将軍との関係そのままだ。

おじさん、会議への遅刻など絶対にできない。

かと言って、分析結果のレポートができるのは、いつも、会議前日のギリギリだ。

いやもう、前の日にやっとの思いで出来上がったレポートを持参して、当日の朝に大阪の自宅を出る。

東京に前泊する等と言う余裕などない。

ご存知の通り、おじさんは、お馴染みの奥河内の里山に暮らしている。

だから、東京に辿りつくのは、並大抵の路程ではないのだ。

朝は、南海高野線の始発に間に合うように自宅を出る。

起床は5時、未だ辺りは薄暗い。

最寄駅までは徒歩である。

およそ1時間程度かけて、新今宮に着く。

そして、環状線に乗り、大阪へ出る。

そこで乗り換えて、在来線で新大阪駅に到着する。

次いで、新幹線に乗り換え、やっとの思いで、東京駅に到着する。

さらに、山手線に乗り換え、何とか秋葉原に辿りつくのだ。

ここからは、疾駆して、電気街を抜け、目的の会社のエントランスホールへ飛び込むことになる。

こうして、何とか午後2時か3時に始まる会議に間に合うことになる。

会議は2時間から3時間程度だが、その後の周旋処理をすれば、もう会社を出るのは、とっくに7時を過ぎている。

それでも、まだ往路は良い。

復路になれば、さらにスリリングな事態になる。

行きと同じ経路を辿って戻ることになる。

ほとんど、いつも乗車できるのは、東京発の大阪行き新幹線 最終の午後9時過ぎ発だ。

そうなると、新大阪に着くのは午後11時を過ぎている。

在来線で大阪へ。

さらに乗り換え、環状線で新今宮に着く。

ここからが凄まじい。

出来るだけ、環状線の車両は、南海電車の乗り継ぎ通路に近い車両に、あらかじめ、車中を走り抜け、移動しておく。

電車が新今宮に着き、ドアが開くやいなや、まさに競馬場のゲートが開くがごとく、電車を飛び降り、一目散に、南海電車のホームまで、連絡通路を突っ走るのだ。

ほぼ、全力疾走でないと間に合わない。

間に合わなければ家には帰れず、深夜、ビジネスホテルやカプセルホテルを求めて、いささか治安の良くない新今宮の街を、うろつかざる得なくなる。

それは、もう必死だった。

まあ、その分、スタートダッシュはかなり早くなったと思う。アハハ! 

さて、こんなバカなことを、おじさん、一年にも渡り、続けることになった。

結局、このプロジェクトは、ある時、あまり効果が上がらないことが分かり、ヘソを曲げた殿様のご乱心で、いやいや、鶴の一声で終ってしまった。

おじさん、正直言ってホッとしたものだ。

しかしながら、江戸の時代も、そして現在も、つまらない権力闘争に、おじさんたち善良な下々の人間は振り回されるのだ。

時は移れど、人間のやることは変わらない。

いやはや、日頃、ど同様のことで、組織とその権力者に振り回されている人たちは、この映画を観ることで、溜飲を下げて頂くのも良いだろう。

常々、宮仕えの無理難題に飽き飽きしている人はどうぞ!

いささかなりとも、カタルシス効果があるかも知れない。

  ※ヤフーブログにて 2016年4月16日 アップ

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